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北遠州・秋葉神社参りの客で賑わった宿-松本屋旅館

遠州地方の山間部、火の神様秋葉神社に近い位置に松本屋旅館という古い旅館があるとの情報を数少し前に得た。周辺は訪ねたい古い町並も比較的多くある地域だったので、この旅館に泊ることを核とした町並探訪計画を立てた。当初は9月の秋分の日がらみの連休の予定であったが、運悪く台風の影響を二度にわたって受け、11月初旬にようやく実行することができた。
延々と谷あいの道を辿って集落に着くと、なぜこのような所に伝統的な旅館があるのか不思議に思わせるところである。しかし気田川とその支流が合流するところに位置し、古くは舟運もあったというから、秋葉神社への客と商用客によって賑わっていたのだろう。以前は他にも複数の旅館があったらしい。
この松本屋旅館は明治10年創業といわれ、一度集落内を襲った大火により建物は大正期に建替えられたものだそうだ。今はご夫婦でこじんまりと営業されているが、かつては従業員も抱え賑わっていた宿と思われる。玄関のある棟とその奥の現在宿泊用として主に使われている棟、そしてその奥には宴会用の大広間のある平屋の建屋と続く。ここは石垣によって嵩上げされた上に建っており、玄関からは階段を二度上ることになるため宿の方は三階と呼ばれていた。

しかしその三階部分はこの旅館で最も見応えのある空間だった。襖をはずすと40畳の大広間になり、欄間や床の間などの意匠も凝っている。さらに書や絵画も随所に掲げられ、女将さんの説明の詳細は忘れたが要人の書もあるという。ご主人によると市の文化財指定を待っているとのこと。もちろんその価値は十分に感じられるし、この大広間の存在あってのこの旅館と思う。使用頻度は一時よりは低くなったのだろうが、昨日もここで宴会が行われたのだという。秋のこの時期は祭なども多く、結構な利用客があるそうで、そのことも私の宿泊日が延びた理由の一つだった。

玄関の佇まいも長い年月をかけてこその風合いが感じられるもので、古い柱時計(しかも今も動いている)、電話室なども残され、それはご主人が古いものを大事にされ、誇りに思ってこられた結果に他ならぬことだろう。

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松本屋旅館 二枚目右側が大広間のある別棟


食事も割烹旅館を名乗っているだけあって満足すべきものであった。特徴的だったのが山芋がふんだんに食材として使われていたことで、マグロの山かけ、とろろ蕎麦などもあり、仕上げにはとろろ飯をいただいた。その他新鮮で大柄な鮎の塩焼きなど、宿泊料金に比して十分すぎる内容だった。

後継者がなく4代目限りという情報も聞いていたがやはりその通りなのだという。このような古い宿が失われていくのは、宿泊客の減少のほかに経営者に跡継ぎがいない、老朽化した建物の維持費、そして後一つ大きなものが宿泊施設として義務付けられている消防設備への対応である。この旅館では費用を投じて消防設備は整えたというが、やはり後継者不在はいかんともしがたい。
宿泊客も以前は秋葉神社参拝の固定客も多かったが、最近は年末近くに訪れるわずかな団体くらいとのこと。鮎釣客なども多かったのに、最近はわざわざ旅館に泊る客はなく車中泊してしまうと女将さんは言われていた。

当日の宿泊者は私のみだったが、女将さんもご主人も親身になって接していただいた。家庭的な雰囲気が感じられる良い宿泊感が残った。少しでも永らく旅館として続いてほしいと思いながら後にした。
(2019.11.03宿泊)

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玄関に入ってまず驚くのが電話室と古い柱時計 時計は今も正確に時を刻んでいる
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別棟の大広間は襖絵や欄間の意匠 絵画や書などが掲げられた貴重な空間であった
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夕食の膳 とろろ料理が自慢だと云う
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宝塚歌劇団が宿泊したこともあるそうで 写真や色紙が飾られていた

# by mago_emon3000 | 2019-11-11 23:03 | 東海・北陸の郷愁宿 | Comments(0)

津軽海峡を望む濃厚な湯-下風呂温泉・大湯

下北半島の津軽海峡側に下風呂温泉という温泉場がある。江戸時代には漁村であるとともに温泉街としても既に知られており、共同浴場のひとつ大湯は貞享4(1687)年にその名が記録されている。
温泉街には近代的なビル型旅館も見られるが、一歩山手に入ると趣のある旅館が散見され、その一角に大湯はあった。
伝統的といった雰囲気よりもシンプルな昔ながらからの共同浴場といった佇まいで、午後のまだ浅い時間帯だったので他に一人入浴客があるだけだった。浴場内はヒバ材が床材として用いられ、湯でぬれた部分では足が滑る。浴槽が二つ並び、一つは相当熱いとのことだったのでもう一つの方に。驚いたのがその濃い泉質で、常時掛け流されている湯は白濁し、硫黄臭が漂う。
この後大畑の町並を散策後今日泊る温泉宿に向ったが、そこは素直な湯で、それよりもまだ下風呂温泉の匂いが体に染み付いているのを感じた。相客がシャワーの湯で体を流してから出ていた理由がわかった。
この共同浴場が閉鎖・移転するとの情報を耳にした。ちょっと調べると来年度中には行われるということで、この風情ある浴場ももうあとわずかのようだ。
(2018.04.30訪問)

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下風呂温泉大湯の建物

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浴槽が二槽並ぶ 浴室の床はヒバ材が使用されている

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付近の旅館街


# by mago_emon3000 | 2019-11-08 22:57 | 北海道・東北の浴場 | Comments(0)

蕎麦が自慢の蔵造り宿-小諸・つたや旅館

まだ信濃路にとっては春浅い時期、探訪の一夜を小諸の北国街道沿いにあるこの蔵造りの宿に求めた。どこで情報を仕入れたかは覚えていないが、直接電話で予約を入れた。まだ信州では桜開花前の時分で、「遅い雪が降ることもあるけどまあ大丈夫でしょう」とご主人と話を交わしたのを覚えている。
この「つたや旅館」は創業300年を数えるといわれ、明治の建築というこの建物は著名な俳人・高浜虚子が戦時中疎開を兼ねて停泊したと云われる部屋も残り、当日は他に一人の常連らしい客があるばかりで、この部屋に泊ることになった。坪庭に面した部屋は街道筋の賑わいなど全く無縁で、壁には虚子の句の掛軸などが掛けられていた。
夕食は見慣れない山菜の数々、地元の鯉料理など品数多く、主人と焼酎を酌み交わしながら仰け反っていると、さらにこの店の名物という蕎麦が出てきた。さすがに全てを食することはできず恐縮してしまったが、記憶が間違いなければビジネスホテル並の安い宿泊料金であったはずだ。
帰り際に奥さんから今年一杯で旅館は止められるということを聞いた。
その後、佐久市内で「めん茶房つたや」という蕎麦屋を新たに開かれているようだ。
また、旧つたや旅館の建物は、「ギャラリーつたや」として、貸し店舗やレンタルスペースとして使われているようだ。
昨年も東信地方を訪ね、店があるという佐久市中込にも足を記したのだが、このつたやのことをうっかり忘れてしまっていていた。遠方ながら再訪なるか。ここに記事を立てることで、備忘録としたい。
(2006.04.08宿泊)
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旧北国街道沿いに建つ旧「つたや旅館」
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館内は古い姿の保存状態がとてもよく、電話室も残る
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泊った部屋には高浜虚子の句が記された掛軸もあった

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# by mago_emon3000 | 2019-10-29 22:39 | 関東・信越の郷愁宿 | Comments(0)

湧水の里での一泊-越前大野・阿さひ旅館

越前大野は水の豊かな土地で、ほとんどの家庭では地下水を生活水としているという。福井県と岐阜県を目的とした町並探訪の中、ぜひともこの町で一泊、それもせっかくだから旅館に泊りたいとうことでこの宿を選んだ。当時はまだ積極的に旅館に泊りたいという思いは淡かった。
創業の古い宿と思われるが外観も内装もある程度近代的に改装されていて、今の私の基準では物足りないということになろうが、当時はビジネスホテル泊がほとんどであったこともありくつろぎを感じつつも新鮮さを覚える宿泊感覚であった。
食事も別に個室があてがわれ、いつもとは異なった上級な宿に泊っているような感触になったが、料金は安価な宿でホテル泊+外食のケースとほぼ変らない。但し料理についてはどうもここでは調理せず仕出し屋から取り寄せているようだ。あるいは、旅館とは別に料亭などを経営しているのかもしれない。
地方の小規模な宿は宴会場として利用されることも多い。そちらの方がメインになっている旅館もある。当日も窓越しに宴の様子がおぼろげに見えた。
(2007.10.13宿泊)

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# by mago_emon3000 | 2019-10-23 21:55 | 東海・北陸の郷愁宿 | Comments(0)

格安で泊ることもできるー別府・駅前高等温泉

わが国を代表する一大温泉地・別府は市内随所が温泉地となっており、駅付近も例外ではなく至るところに旅館や共同浴場、さらにはビジネスホテルにも付属の温泉施設があったりする。
そんな中に象徴的な施設がある。その名も駅前高等温泉。高等かどうかは別にして、この洋風の外観は一見わざとらしいように見えても築90年というかられっきとした伝統的洋風建築である。そして内部にはぬる湯と熱湯の二種類の浴場があり、私は熱い湯は苦手なので前者の方に入ってみた。
階段を降りた半地下のような構造になっていて、駅前のざわつきとも無縁な空間であり実に落着く。
最初中学生くらいの2人の客があり、ちょっと外で遊んだついでに入って帰るかというような感じに見えた。ここに限らないが料金が100円と格安なので、こういった利用法も普通なのだろう。
階上には宿泊施設もあり、1泊何と2000円代で泊れるとのこと。温泉に存分に浸かり、付近は飲食店も事欠かないし、ちょっとした居酒屋に入ってもトータル5000円位で全て完結できるという実にお得な宿泊になることは間違いないだろう。
(2018.11.23訪問)

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# by mago_emon3000 | 2019-10-21 22:55 | 九州の浴場 | Comments(0)