大阪の中心市街地にも近い城東区関目地区。関目5丁目の交差点付近はレストランやファストフード店、コンビニその他の姿が見える。京阪電鉄・関目駅より徒歩5分ほど、複数の地下鉄の駅にも近く、こんなところに古い旅館があるとは思えない風景である。
しかし、一歩路地に入ると立派な門を持ち敷地内に土蔵も見える立派な古い邸宅が所々に見られる。付近は戦災を免れ、表通り沿いとは違い更新されず古い町の姿が残っている。
「水月旅館」はそんな一角にあった。辻々に親切に案内看板が出ており、路地奥にありながら迷うことはなかった。スクラッチタイルに覆われた壁、二層・三層になった屋根の造りなど、大阪市街の古い町でよく見る造りの建物だった。
旅館の看板は出ているが、外見はやや大きな古い住宅といった雰囲気で、アルミ製の門扉を押して玄関に向うのも宿らしくない。らしいものといえば、玄関先に宿泊料金が記された小さな表示板が掲げてあることくらいだ。
宿は女将さんとその娘さんらしい女性(若女将と仮に呼ぶことにする)で切り盛りされているようだ。女将さんによると旅館建物は築80年余りで、宿の性格的には商人宿といったところだろう。
若女将から泊る部屋と風呂その他の使い方等について丁寧に案内いただく。最初に思ったのが、館内の様子から古さが余り感じられないことだ。それは天井や階段その他各所の建材や意匠が新しく整えられているからだろう。聞くところによると(おそらく既に他界された)ご主人が器用でまた細部にこだわる方であったので、30年前くらいに内装を一新されたとのこと。
通された部屋は6畳間で、古さは感じるものの清掃も行き届いており、快適に滞在することができる。
風呂は家庭風呂をやや大きくしたようなものだが貸切でゆっくりと入ることができ、また共有スペースには冷蔵庫やコーヒーをセルフで入れられるよう、ポットなども備え付けられていた。
詳しくは聞かなかったが思ったより宿泊客は多いようで、当日も年明け早々だったが他に3組くらいの泊り客があるようだった。安価な宿泊料金、各交通機関から便利な位置、付近にビジネスホテルなど他の宿泊施設が少ない、それに固定客の存在もあるか。それに気軽にネット予約できるというのも大きいかもしれない。
食事の提供はないものの、初めに書いたように周囲には飲食店やコンビニが多くあり、困ることはない。京阪電車や地下鉄で京橋や梅田にも10分以内である。私は翌早朝出発のための前泊として利用したが、便利さと安価さ、さらに伝統的な旅館と云うこともあり申し分ない一泊であった。
(2022.01.01宿泊)
水月旅館の正面(狭い路地にあるため全体が入らない)
スクラッチタイルに多層状の屋根 うだつ調の構築物もある典型的な大阪の商家風建物だ
玄関回りの風景
通された部屋
館内点描
付近には親切な案内看板が所々にある
# by mago_emon3000 | 2022-01-23 16:30 | 近畿の郷愁宿 | Comments(0)