大山寺の宿坊として400年の歴史-山楽荘

石段下より見上げる玄関付近
鳥取県西部、伯耆富士とも呼ばれる大山は信仰の山でもあり、中腹にある大山寺はその象徴であった。各方面から大山寺に向う参道がのび、街道集落が発達した。その終点がこの門前町で、全ての人が目指したところだ。門前街入口の駐車場付近では牛馬市が盛大に開かれていたというから、大層なにぎわいだったのだろう。
駐車場付近から参道は一直線の坂道となって寺に達している。両側には土産物屋や旅館などがあるが、次第に緑が濃くなりやがて大山寺の山門が見えて来る。
本日宿泊する「山楽荘」は、その山門近くにある宿坊である。宿坊としては400年もの歴史があるといい、大山寺の山内十ヶ院のひとつ「観證院」という称号が付され、最も格式ある佇まいを保っている。
旅館建物は参道から少し奥まった位置にあり、その部分は駐車場となっているが樹々が鬱蒼とした感じで、厳かな風情を漂わせていた。玄関は石段を上った少し高いところにあり、「山楽荘」とやや控えめな屋号の表示が宿坊らしい佇まいだった。
早速僧侶の格好をした方(以後ご主人と呼ぶ)に部屋や風呂場などの案内を受ける。玄関から左手の二階、こざっぱりした八畳間だった。角部屋で参道方面の緑が二方向に見渡せ、明るい部屋だ。ご主人に聞いてみると建物自体は戦後になって内外装とも大きく改められたが、玄関に向って右側の部分は屋根がトタンで覆われ茅葺だった名残が残っており、古い姿を残している。広い仏間もあり、申し込めば座禅や写経の体験もできる。
当日の他の客は私とほぼ同時に到着したご夫婦一組と、女性の一人客のようだった。

大山寺の参道(旅館付近)
食事はその古い棟部分の個室を案内された。この旅館の食事の特徴は、宿坊だからもちろん精進料理なのだが、その食材は基本的に大山で採れた山菜を主体としていることだ。というのも、付近は土地がやせているため野菜があまり育たないそうで、その代わり多く採れる山菜をメインにしているとのこと。しかしそれを求めて泊りに来られる客もあるようで、私も今回楽しみにしていたもののひとつである。
一通りの説明を受けたのに忘れたものが多い。メモしておけばよかったと今更ながら後悔しているが、山うどやコシアブラ、ゼンマイなどが少量ずつながらさまざまな調理法で登場した。そんな中に根曲竹の煮物もあった。東北地方や信越などもう少し寒冷な地方のものというイメージがあったが、この付近の標高のあるところでは採れるのだという。
朝食には温野菜サラダというのが出てきて、私にとっては少々珍しい食感だった。野菜は麓の方の畑で栽培されているものだという。
大山寺付近の標高は800mほど。朝夕は暑さを感じることなく、快適な別天地といったところだ。朝は大山寺と門前街、宿坊街を散策した。参道では多くの登山客とすれ違った。ただご主人によると、最近の猛暑続きでここでも日中は30度を超える日があり、何時もよりは暑いとのことであった。
(2025.07.05宿泊)

玄関に向って右側は茅葺だった頃をうかがわせる


ロビーの風景

案内された部屋

到着後まずは汗を流した風呂


二階部分の廊下

一階廊下 座禅なども行われる仏間

食事した部屋

山菜精進料理の夕食

朝食

by mago_emon3000 | 2025-07-21 12:33 | 山陰の郷愁宿 | Comments(0)

