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築300年の建物が現存-安芸吉田・いろは家旅館



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いろは家旅館の主屋


吉田の町は市街地西にある山地一帯に毛利氏による郡山城が構えられ、中世には既に大規模な城下町が形成されていた。江戸期になると山陰・山陽連絡の要地となり、商業も発達した。旧市街には、現在も所々に伝統的な建物が残り、古い町並が見られる。

町の一角に「いろは家旅館」がある。近くの辻には二階の立ち上がりの高い見栄えのする商家建築もあるが、それに比しては案外地味な外観である。しかし、当館の主屋は築300年を誇り、旅館としての創業は180年ほど前の江戸末期頃だそうで、それまでは酒屋など商売をされていたという。


入口は主屋の正面玄関ではなく、向かって右側の側面に増設された入口から建物に入るようになっていた。女将の話によるともともとの玄関は「方角が余り良くない」と判定された?とのこと。しかし、入って玄関回りを見渡すと、大きな柱時計が今も正確に時を刻んでおり、正面には太い柱が聳えている。恐らく補修をされてカバー被覆されているようだが、太い一本柱が貫いているに違いない。奥には立派な彫刻などがあり、「御本陣」と書かれた木札も見える。女将は良く判らないというが、創業後の幕末頃にそういった要人の宿泊もあったのかもしれない。


早速客室に案内を受けたが、今では宿泊客は主屋ではなく、向かって右側の後で増築された棟があてがわれているようだ。おそらく戦後築と思われ、私が本来泊りたい伝統的な客室という訳ではないようだ。しかし、広々として天井も高く、また二方向に広い窓がある明るい雰囲気の部屋である。この建屋に4部屋程あるようだ。


部屋で少し休憩し、さっそく主屋を一通りまわった。玄関の奥側は左側に調理場などのある廊下、さらに進むと大きく改装され新しい風呂場、洗面所が見えた。二階へ上がるとそこにも幾つか部屋が見えた。廊下から見える柱や梁は、300年前の建築当時そのままのようで武骨な太い材料が縦横に組まれ迫力を覚える。下を見ると、もとの正面玄関が見下ろせた。

さらに表側に進むと大広間があった。通りから見える二階部分である。立ち上がりが低いので、屋根の勾配がそのまま部屋の天井に表れ、梁がむき出しになっているのは少々変った趣の部屋である。しかし、会合・宴会があるときなど、今でも使われているのだという。さっき見た部屋も、少し覗くと綺麗に整えられている様子だったので、客の多い時には使用しているのだろう。


食堂は玄関からほど近い広間で、机と椅子が並べられていたがもともとは客室で、床の間や畳敷きを外してこしらえたように思えた。もともとは部屋出しだったか。別棟の階段は急で、運ぶのは結構大変そうである。食事内容は家庭的なものだが、宿泊料金的には十分すぎるものだった。

応対された宿の方は、最後まで女将さん一人だけだった。もともと1週前に予約を入れようとしたがスポーツ大会の関係で満室だとのことでこの日になったわけだが、このように地域の行事や合宿などにも利用され、細々ながら続いているようであった。

(2024.11.16宿泊)



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正面全体 付属棟を挟んで現在主に客室として使われる戦後建築の棟




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今の玄関は主屋側面に後付けされている




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玄関回りの様子 古い時計や「御本陣」と書かれた板が




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案内された部屋




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泊った棟の裏手から見る 主屋は奥深く建屋が連なっている




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築300年の主屋二階には当時そのままの梁組が残される




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主屋二階正面部の広間 梁組が露になった独特な造りだ




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二階に向う古い階段には虫食いの跡が




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食事した部屋と夕食・朝食 もと座敷を改装したもののようだ




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この手形は戦後に泊った力士のものという


by mago_emon3000 | 2024-12-12 14:45 | 山陽の郷愁宿 | Comments(0)