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河原の野湯から始まった昭和7年創業の老舗-三朝温泉・旅館大橋



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三徳川対岸から見る旅館建物群



三朝温泉は放射能泉としてその泉質が有名で、「三度朝を迎える頃には病が癒える」というのが温泉名の由来といわれるほどその効能が高いとされ、多くの湯治客・観光客を迎え入れてきた。

温泉街の中心を流れる三徳川沿いに旅館が連なり、中心に位置する三朝橋からは温泉地らしい風情が感じられる。下流側を見ると、「旅館大橋」の建物が川沿いに二階屋が5・6棟ほど連なっており、ひときわ趣と格式を感じる佇まいを見せている。表通りからは古い町並的な佇まいをも感じさせる。


出張の傍ら、今回はこの旅館に泊れることになった。平日限定、素泊りという条件で割安に1人客も泊ることが出来る。予約が多く入っていない日に設定されているように見られ、空き室にしておくよりは稼働させた方が良いとの判断だろうが、週末の二食付ではなかなか泊りにくい価格帯なので、有難いことである。


全体で20の客室があるが、内装が同じものはないという。共通しているのが部屋は全て三徳川に面していることで、私が通された踏込付きの8畳間の部屋も広縁からは流れと瀬音が間近だった。露天風呂付の部屋や、準特別室と呼ばれる格式ある客室もあるようだが、おそらくここは一番標準的な部屋なのだろう。安価なプランでのこと贅沢は言えない。しかし冷たいお茶をいただきながら館内の説明を受けていると、出張での宿泊とは思えない満ち足りた気分になってくる。


川沿いに湧く野湯が旅館の起源で、昭和7年に旅館として創業、増改築を数えながら今年で92年を迎え、建物群は登録有形文化財に指定されている。内部は廊下で一体化し、一つの広大な旅館建物という印象である。象徴的なのが太鼓橋を模した渡り廊下で、廊下側からも窓の外に木製高欄が見える。この下を潜って川沿いに出られるようになっている箇所だ。


館内には大きく二つの浴場がある。上流側の棟にある「巌窟の湯」と下流側の「せせらぎの湯」で、前者は宿の起源である野湯そのままに天然の河床を利用した浴場で、今も足元から湯が湧いているという。男女入れ替え制で、当日夜9時までは「せせらぎの湯」それ以降は「岩窟の湯」とのことで少し休憩後早速せせらぎの湯に向った。露天風呂があり、屋内側に檜風呂と内風呂が1箇所ある。暑い日だったが、露天の湯はややぬるめで滑らかな肌触りで、現場出張の汗を流すには十分だった。


夜は三朝大橋近くの居酒屋を利用し、その後短い間ながら夏の間毎日行われる花火を見たりして温泉街の散策らしい一夜を過ごした。案外泊り客が多いと思ったら今は夏休み期間中だ。花火を見る子供の歓声が聞こえ、旅館大橋にも親子連れの宿泊客があった。


「巌窟の湯」には翌早朝と出発前に二度入った。半地下のような場所に三箇所の岩風呂があり、下の湯・中の湯・上の湯と表示され、それぞれ源泉が異なるのだという。いずれも放射能泉なのだが下・中の湯が三朝温泉で一般的なラジウム温泉なのに対し、上の湯は唯一のトリウム温泉とか。浴感は変らないが、まさに岩風呂そのもの、自然の河床だったところだけあり変化に富み、立っていても胸の高さまである深い場所もある。連泊して何度も浸かればどれだけ薬効があるのか、試すこともできず残念ではあるがせめてもと各湯を「惜しむように」繰り返し出入りした。


館内の主だったところを一通り見て回ると、とにかく川沿いに連なる長大な建屋群を実感するとともに、古い素材を活かしながら今の宿泊客も快適に過ごせるような工夫もあちこちに見られた。上流側の建物の二階部には立派な大広間もあった。

(2024.08.06宿泊)



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温泉街側から見る旅館建物



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太鼓橋がデザインされた渡り廊下



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フロントの風景



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傍らの小部屋には以前のパンフレット類が



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案内された部屋



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広縁からは三徳川が見渡せる



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泊った部屋付近の廊下


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太鼓橋部分の廊下



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玄関寄り二階部分の廊下



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二階大広間



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「せせらぎの湯」の露天(旅館サイトより)



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「巌窟の湯」(旅館サイトより)



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by mago_emon3000 | 2024-08-24 16:34 | 山陰の郷愁宿 | Comments(0)