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昭和初期に造られた企業の厚生施設-上諏訪温泉・片倉館


中央本線上諏訪駅の諏訪湖岸側は大型のホテル型旅館が中心ながら温泉街が形成されている。

そんな中に片倉館という施設がある。片倉家は片倉製紙紡績株式会社など明治から大正にかけて隆盛を誇った製糸業の頂点にあって、片倉財閥とも称され、数多くの企業を経営した。片倉館は地域住民の厚生・社交場として昭和3年に竣工した。

二代目片倉財閥当主が大正後期に欧米諸国を視察した際、各地に多くの厚生施設があるのを目にし、わが国でもそのような地域に還元する施設を、ということが発端となった。204畳を誇る舞台付きの大広間、食堂などがあるが、中でも千人風呂と呼ばれる大浴場が有名である。

片倉館は非常に特色のある二棟の建物で構成されている。建物は千人風呂のある棟(便宜的に本棟と呼ぶ)と会館棟の2棟で、いずれも洋風の外観を持ち、とりわけ本棟に三段に積み上がった尖塔、高い煙突はシンボルとして一番の特徴となっている。

通常は会館棟の見学も可能なのだが、当日は貸切利用でもあるのか出入りできるのは本棟のみとなっていた。


本棟に入って見るとスーパー銭湯などでは感じられないクラシカルな雰囲気に満ちている。早速千人風呂を目指したが大理石の浴槽は千人はオーバーでも100人くらいは一度に入れる広さで、底には石が敷かれているため独特の浴感である。湯船の広がりは、浴槽というより温水プールといった方が的確なようで、数人の客はあったが、持て余している感があった。ステンドグラスなどの意匠もあって、上品な空間の中でゆっくりくつろぐことが出来た。

建物二階にも見所がある。まずそこへ向う階段と窓も建築当時からの年季がこもったような格式が感じられる。食堂と休憩所があり、中途半端な時間だったので食堂の利用客はなかったが、食事だけでも十分利用価値があると言えよう。食堂と休憩室との仕切りはなく広々とした空間で、柱の意匠もレトロ感があり、また利用者への注意書きなど記した古びた琺瑯製看板も味わいを出していた。

建物の裏手に廻っても、正面からはまた異なる表情で違った風情があった。

(2024.05.31訪問)



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「本棟」正面より


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浴場(諏訪観光連盟サイトより)



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裏手より


by mago_emon3000 | 2024-07-07 12:23 | 関東・信越の浴場 | Comments(0)