宍道湖を望む一等地に建つ明治12年創業の老舗-松江・大橋館
松江大橋と大橋館
宍道湖から流れ出る大橋川は松江市街中心部を貫き、中海とをつないでいる。そこに架けられた昭和12年竣工の松江大橋は日本百名橋に選定され優美な姿を見せている。江戸初期に松江城建築の際、最初に木橋が架けられた位置にあり、その後何度か架け替えられ後期には大橋と呼ばれるようになった。
大橋の北たもとに旅館「大橋館」がある。創業明治12年の老舗で、今の建物は近年になって建て替えられたものというが、現代的ビル旅館の建ち並ぶ西側にある温泉街の建物群とは一線を画した風情があり、大橋との取り合わせが実に絵になる。松江の市内では一度泊ってみたい宿と思っていた。
ただ私の最も好む中小規模の鄙びた宿とは少し趣が異なることや、日帰り圏でもあり泊ることを主目的にするにしてはどうか、との思いがあり、また観光温泉旅館なので週末の料金が割高となる。そうしたことから出張時を利用するのが最適との思いでその機会が訪れないかと目論んでいた。朝食のみだったら比較的手軽な値段で、幾分か個人で加算すれば泊ることができる。
案内された部屋は大橋川側に面し、広縁からは松江大橋、先には宍道湖も遠望される。早くも薄暮の風景に変り、橋を往来する人や車、時折その下を小船が通過していく。大橋のたもとというのは、当時旅館が立地するには一等地であったに違いない。もちろん今でも変わらないといえるだろう。
地下には松江温泉から湯が引かれた温泉浴場がある。晩秋から初冬へ向う平日のことフロントではわずかな客を見たが浴室内は無人で、朝風呂とともに湯を存分に味わうことが出来た。無色透明で癖のない湯だが肌触りは良く、投入口付近には析出物があって温泉であることを示していた。
朝食は2階にある料亭で、個室になっており落着いていただくことができる。シジミの味噌汁はお代り自由で、イカの刺身やカレイの焼物、湯豆腐などさすが格式ある旅館の朝食といった内容であった。満ち足りた気分で外を眺めていると、早朝からシジミ漁を行っていたらしいの小型の漁船が宍道湖から続々と戻ってきており、橋の付近で留まっている船もある。見ているとシジミの選別を行っているようだった。そのような風景を見ながら味わう朝食は、また格別なものがあった。
(2023.11.30宿泊)
正面玄関付近
ロビーの様子 チェックイン時に抹茶をいただく
案内された部屋
部屋から見る松江大橋
地下の浴場(夜と朝で入れ替え制)
朝食会場
朝食
朝食会場の個室から見る朝の風景
by mago_emon3000 | 2023-12-24 11:23 | 山陰の郷愁宿 | Comments(0)