創業100年の老舗銭湯は思わぬ盛況-府中・松乃湯
以前、府中市の昔からの市街地を町歩きした際、路地の奥に何だか隠れるようにあるこの「松乃湯」を見つけた。正直当時から営業されているようには見えなかったが、情報によると市内では数少ない現役の銭湯らしい。しかし、その営業時間は17時(情報によると18時?)から19時30分と短いこともあって、訪ねるのが難しい銭湯と銭湯愛好家の界隈では認識されているようだ。
この町の旅館に泊る計画を立てたのを機に、ぜひこの銭湯にも入ってみようではないかと闘志が湧いた。幸い予約した旅館からも数分の至近距離にある。
旅館の女将に銭湯の話をすると、良く知らないとの答え。もちろん存在はご存じだが利用したことはないそうで、旅館の創業より古く100年くらい前からある銭湯だということは教えてくれた。ここに泊る客も入りに行ったという声を聞き、先日も遠方から来たという若い男性客があったという。
ということで改めて準備を整えて向かうと、暗くなってますます小路奥の知られざる銭湯といった感が漂っている。「松乃湯」と書かれた小さな灯りが郷愁感を高める。扉を押すと60歳位と思われる番頭の男性が湯守をされていた。
脱衣室内は意外にもレトロ感が淡く、詳しいことを聞くのを忘れたが一度大掛かりに改装された様子だ。それでも木製のロッカー、以前から使い込まれているらしい体重計、鏡には協賛の商店の屋号が記されている辺りは昭和型銭湯といった風情である。
どうですかとお客さんの様子を聞くと、全然ダメですねとの回答。最近まで市内にはもう一軒銭湯があったが今はここだけだと。しかし、零細そのもののこの銭湯が営業を続けているだけでも奇跡と言ってよいだろう。
浴室は先客1人と入れ違いになったので最初は一人だったが、私が招き猫のようになったのか、次々と5名くらいが入ってきて思わぬ盛況になり驚いた。何しろネットにある数件の記事にも、旅館の女将から伝え聞いた遠方から来たという若者の話でも、他に入浴客がいなかったということだったからだ。いずれも地元の中高年客で番頭とも顔なじみのようである。番頭の話ではほとんどが地元の客だが、最近この銭湯を目的に訪ねる客が目に付き出し、遠方から来たという声もよく聞かれるようになったとのこと。
中間で仕切られた二槽式のタイル浴槽は3・4人も入れば満員になりそうでやや狭かったが、地下水を使っているとのことで肌触りがよく、熱さも適度なぬるめの湯だったので結構長湯した。片側はジェットバス風で、他方は二段式で腰かけた時の高さが胸の辺りで、小休止に丁度よい。壁には鞆の浦のタイル画があった。
湯を独占してのんびりとした入浴を想像していたが、思わぬ賑わいに接し、零細そのものの銭湯にあって逆に何だかほっとさせるものを感じた。湯上り後、小さな冷蔵庫に飲み物が置いてあったので微力ながら貢献させてもらった。
(2023.11.25訪問)


「松乃湯」の外観 2枚目の建物に隠れるような路地奥にある

営業中の玄関付近


脱衣所の様子

浴室 湯気のため不鮮明


体重計・宣伝の貼られた鏡などに趣が

by mago_emon3000 | 2023-12-10 14:41 | 山陽の浴場 | Comments(0)