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看板猫もいる昭和8年築の温泉宿-長湯温泉・紅葉館


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川沿いに大柄な佇まいを見せる紅葉館の建物



城下町で知られる竹田市の北10kmほど、丘陵と谷間が交錯するところに位置する長湯温泉。直入町の中心でもあり、久住山付近から流れ下る芹川の谷間に小さな市街地が展開する。

川の左岸に旅館が固まっているが、繁華街や飲食街はなく一見温泉地とは判りにくいほど地味な風情が漂っている。

しかし小さな温泉場が数多くある中で、ここは泉質の良さが注目され遠方からの客も多い。屈指の炭酸泉といわれ、薬効も高く飲泉により内臓系の疾患にも効き目があるとのことで、前日泊った延岡市郊外の旅館女将も、以前は定期的にここまで温泉水を汲みに行っていたそうだ。


旅館群の中でもっとも目につくのが本日泊る「紅葉館」がある。川沿いに青い瓦葺きの大柄な主屋が印象的で、この本館は昭和8年築、隣接する新館と道を隔てたビジネス旅館風の別館とで構成されており、収容人数的にも当温泉地屈指の規模のようだ。もちろん私は本館の部屋を予約しておいた。

本館の建物は川沿いと市街地寄りの台地にまたがって建てられており、玄関が二つある。町側からは二階部より建物に入る構造になっていた。今はこちらが表玄関のように見えるが、本来は川沿いが正面玄関のようだ。入口の構えも大きく、年代物の階段も使い込まれ光沢を帯びていた。

部屋からは芹川の流れが望まれ、河原のガニ湯と呼ばれる露天風呂が正面に見下ろせる。ちょうど年配の男性と孫たちだろうか小学生くらいの男の子3・4人が入浴中だった。さぞ開放感抜群で気持ち良いだろうが、柵などは全くないので、部屋からは丸見えである。


本館の客室はこの川を望む面に並び、廊下の風情からどちらかというと湯治場の雰囲気を残すものであった。その思いを強くするのが一階部にある浴室である。一憩後早速向かうと、男女別の浴室の向うに貸切の家族風呂がある。今日は宿泊客が少ないようで、鍵を掛けて家族風呂に入って見ることにした。浴室はやや狭いものの、薄茶色に濁りのある湯が勢いよく浴槽にかけ流されていた。口にするとやや鉄錆風味の湯で、いかにも効果がありそうに思えた。浴槽縁には鉄分だろうかびっしりと析出物が付着している。しかし、身体に炭酸の泡が付着することはなかった。以前別の炭酸泉といわれる浴場で日帰り入浴した時はしつこいほど泡が付着したものだが。聞くところによるとこの温泉独特の複雑な成分との影響で、必ずしも付着するわけではないようだ。浴室内の壁に掲げられた説明板には泉質や効能などが毛筆体で書かれ、秘湯入浴の気分になる。

ぬるい湯なので30分以上浸っていたが、この旅館の湯は早期に引湯したこともあり特に良いのだそうだ。夕食後、早朝、朝食後と男湯と互い違いに計4度入浴した。


食事は新館1階の別室で頂くようになっており、当日は日曜日で本館にもう一人、新館に一組ばかりの客だけのようで、個室で味わうことができた。宴会用の大広間を仕切ったものらしく、小さな舞台やカラオケセットがある。豊後牛の鉄板焼、ドジョウの天婦羅などが特徴的で、鯉の洗いも美味だった。汁物も鯉こくで、鯉はこの辺りの名産なのかと女将に聞くと、特にそういうわけではないが近くで食事処も経営されていて、そこで川魚料理も提供しているのだそうだ。


夕食から部屋に戻る途中ふと廊下に猫が座り込んでいるのを見た。実におとなしい猫で見つめても少し撫でてもじっとしたままだ。女将によると、宿で飼っている猫で常連客やこの猫目当てで泊りに来る客もあるという。おとなしさが災いし、以前虎ばさみにかかってしまって鳴き声が小さいためなかなか見つけられずに、保護されたときには傷も深く随分痩せてしまっていたという。今後も穏やかに宿猫として全うしてほしいものと思う。

(2023.09.24宿泊)


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市街地側の玄関(二階部分にあり現在はこちらが表玄関のようだ)




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川側の玄関と二階に向う階段




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部屋からは露天風呂「ガニ湯」が正面に見える




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浴場(家族風呂・男湯)




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浴場へのアプローチも趣深い




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夕食 1枚目が最初の状態 豊後牛の鉄板焼とドジョウの天婦羅 鯉の洗い



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宿の看板猫



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朝食



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by mago_emon3000 | 2023-10-14 15:07 | 九州の郷愁宿 | Comments(0)