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大型旅館の陰で―川棚温泉・竹園旅館


川棚温泉は下関市街地より北へ25kmほどの西長門地方にある温泉地で、海岸から少し内陸に入った小盆地状の所に位置している。はっきりした記録が残るものとしても12世紀に歴史を遡ることが出来、湯本温泉や俵山温泉などとともに長門地方を代表する温泉地となっている。



古くからの温泉街は住宅地の間に小さな旅館が挟まる閑静なところで、その一角にある「竹園旅館」を予約しておいた。

旅館は昭和14年創業、現在の建物も創業当時のものである。表から見える建屋の外装は塗り替えられるなど手が加わっているため一見古い建物には見えないが、正面二階には古びた木製欄干、戸袋には扇の意匠が見えるなど老舗旅館らしいところも残されている。二階部分が客室となっており、廊下を挟んで表側に三部屋ほど、裏側に二部屋あり、後者の一つに案内された。書院付き床の間のある本格的な客室で、部屋の内装の多くは補修等が必要な箇所以外は創業当時のままであるという。表からは見えなかったが、奥に別棟があって廊下でつながっており、食事会場にもなる大広間が見えた。



温泉街を一通り散策後宿に戻って別棟1階の浴室に向うと、5・6名ほど一度に入れる広さの浴槽に新鮮な湯が投入されていた。弱アルカリ性で肌触りがよく、すこし加温をしているようだが長湯に適した泉質であり泉温である。もう一つやや小振りの浴室があり男女入れ替え制となっている。別棟の奥側にも若干客室があるようで、後で聞いたところではもう少し浴室を大きくという要望もあったようだが余り大きく手を加えたくないという先代の意向から内装は変えたが基本はそのままという。この旅館の規模・部屋数だったらまあこの程度の小ぢんまりした風呂が相応しいように思えた。



大広間での夕食は名物フグ料理が振る舞われ、久々に刺身やちり鍋を味わうことが出来た。後ろ側の10名ほどのグループが賑やかだったが、当日は正月3日、恐らく親戚一同の会合か。まあ正月ということでと心に留めた。

朝食の献立には「温泉豆腐」が土鍋で出てきた。温泉そのものではないが温泉の成分を使用しているとかで、堅い豆腐も次第に柔らかくなり、食べ頃にはふわふわとした食感になるという。その頃合いがなかなか難しいらしくついておかなくてはいけないとは女中さんの話。その間に少しお話した所によると、以前は15軒ほどの旅館があったが今は3分の1ほどになっているとのこと。確かに昨夕一通り周囲を探訪してみても、川棚温泉に来る客の多くは1軒ある大型旅館を利用するようで、旅館の看板はあっても営業されていない宿もあるようだった。

歴史ある川棚温泉が大型旅館と共同浴場だけになるのは味気ない。踏ん張ってほしいものと思いながら宿を後にした。

(2023.01.03宿泊)



竹園旅館の外観



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二階部の意匠




ロビーより玄関を望む



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案内された部屋と各部の意匠



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客室の連なる廊下



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大きい方の浴場






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夕食の献立の一部



朝食



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by mago_emon3000 | 2023-01-22 19:11 | 山陽の郷愁宿 | Comments(0)