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美観地区中心の一等地に構える元商家の宿-倉敷・料理旅館鶴形


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旅館建物(倉敷川対岸より)




倉敷の重伝建地区には宿も多くあり、伝統的な構えの老舗旅館から町家を利用した民宿風のもの、元紡績工場の建物を利用した倉敷アイビースクエアといった特徴あるものなどさまざまである。付近を歩くと、早い時期から町並・建物の保全意識の高かったこの地区にあって、そのまま建物だけを保持するか、土産物屋などの店舗として活用するかなどとそれぞれに模索された様子がうかがえる。

そんな中で「料理旅館 鶴形」は美観地区の中心、倉敷川沿いに立地しており、まさに一等地といえる場所にある。

料理旅館ということで食事付きで宿泊してこそ価値のあるものだろうが、何かの記念でもない限りなかなか気軽に泊れない料金設定でもあり思いきれずにいた所、遅めのチェックインでの素泊りプランがあり、それを利用して泊ってみることにした。


宿に着いた頃は既に暗く、また夕食の準備等に忙しそうな様子だったので部屋に案内を受け、一通り建物内を歩いて感触をつかみ、風呂に入るくらいにとどめ、出来れば明朝旅館の色々を聞いてみたいと思った。どうやら夜勤の従業員に詳しい方がいるとのこと。

泊った部屋は玄関からずっと奥に進んだ突当りを左に曲がり、階段を上った一番奥にあった。シンプルな和室だが、よく見ると柱に接ぎ木をした跡がある。古い梁がそのまま使われている様子もわかる。

予備知識としては建物として280年の歴史を数えるもと油商の御宅で、保存地区内では本町にある井上家に次ぐ古さで、代表的な旧家・商家でもあるということくらいである。だが、古い商家の建物を旅館として活用しようとするとどうしても構造的な問題が生じて来るはずだ。そのような旧家は広い敷地に主屋、付属屋、土蔵などとそれぞれ別棟になっているのが普通だからだ。しかしいったん外に出たりすることも段差などもなく、普通の旅館と全く変わらないように部屋に到着できている。



翌朝町並を一通り散策後、詳しい方とお話しすることが出来た。1970年頃、先代は宿泊施設として再出発させるという思い切った決断を行った。一旦建屋を解体し修繕されたとのことで、古い木材は使える部分は極力再利用したという。柱に接手があるのもそのためなのだろう。

またその解体修復時に一部つなぎの棟をこしらえたが、各建物の間に大きな高低差がないのでそれほど苦心することはなかったという。しかし不自然なく一棟に見せる技巧は見事といえる。明るくなって廊下の窓から見ると中庭を囲んで裏手の土蔵や複数の付属屋が連なっている様子が見え、その複雑な建屋群を旅館に仕立てた様子を目にしたかったものだが、当日は中庭に面した部屋にもお客があり、庭に出るのは遠慮してほしいとのこと。

それもこの宿の魅力あってのことであろう。当日は初冬の週末であったが、家族連れや若い男女、熟年夫婦など様々な客があり盛況のようであった。建物そのものはむろんのこと、宿の玄関を出るといきなり倉敷川沿いの「絶景」に接することが出来るというのはなかなか体験できないものだ。

(2022.12.10宿泊)



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旅館の夜景




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玄関回りの風景




フロントから続く廊下



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建築当時の梁がそのまま使われている



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案内された部屋 柱に継いだ跡が見られる



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浴場




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館内から中庭を望む



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二階廊下から 裏手の棟々の様子が見える



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旅館裏手の路地(左が旅館建物)




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by mago_emon3000 | 2022-12-31 13:28 | 山陽の郷愁宿 | Comments(0)