水運で発展した町で創業250年を誇る宿-登米・鮱武(えびたけ)旅館
市街地の東を北上川が流れ、かつては川を通じて物流が盛んに行われ発展した登米町。古くは城下町でもあり政治・教育の中心であり、その遺構も色濃く残ることから「みやぎの明治村」と呼ばれ訪れる人も多い。
町の中心にある「鮱武(えびたけ)旅館」は創業250年という老舗旅館で、水運賑やかな頃から多くの旅人や用務客を迎え入れてきたことになる。店蔵や看板建築などの並ぶ古い町並の中心部に位置し、町を代表する旅館であることがわかる。
玄関は表通りから少し奥まった位置にあった。玄関回りは歴史を感じさせ、明治時代の建物という。一方、玄関横から角屋のように通りに向って伸びている建屋部分は比較的新しく見え、1階部分には牛タンの看板の見える飲食店となっている。このような古い旅館を訪ねると、表通りに面した部分を増築・改築し、現代風の外観に整えている例が少なくない。
案内されたのはその新しい建屋部分の2階にあった。実はこの宿はネット予約したのだが、コメント欄になるべく古い(伝統的な)部屋を希望と伝えておいたのである。女将によると先客があってとのことだったが、一般の客は基本的にこの新館部分に案内されているようだ。
古い部分の客室の様子を廊下からうかがうと、鍵のない広間風の部屋で、襖で仕切られている昔ながらの部屋のようだ。合宿の学生のようなグループ客、現場関係の長期滞在客などはまだしも一般の個人客には今や不向きな構造といえ、ここに案内するのは忍びなかったのだろう。勿論案内された部屋も小ざっぱりした6畳間で、落着ける雰囲気であった。
古い旅館建屋部分を一通り巡ってみると、廊下は長年の使用により光沢を帯びており、玄関へ続く階段も重々しく格式を感じる。並んだ客室の一つを失礼して少し襖を開けると、立派な床の間付きの部屋であった。また、食堂と貼紙のある部屋もあり、宿泊客の人数やグループによっては食事会場として使っているようだ。
食事は部屋出しで、刺身盛合わせのほか鰹のタタキ、ホヤなどの酢の物のほか牛タン焼、鰻の蒲焼まである。料理屋を併設しているとはいえ、宿泊料金からすると大変なご馳走だ。観光地の旅館など、宿泊料金に対して食事内容が下回ることがしばしばあるが、このように大幅に上回るのは喜ばしい事である。それどころかこの料金で良いのかと思うほどであった。せめてもとビールと地酒を注文した。
翌朝町の裏手の北上川の堤防上から見ると、旅館の敷地はかなりの奥行きの深さを持っていることが分かった。創業の頃は川側から直接出入りできるようになっていたか。そのような想像を抱かせる風景であった。
(2022.07.16宿泊)

旅館正面の外観

増築部分から玄関を望む



玄関回りの様子

階段より玄関を望む



二階部分の様子

一階部分の廊下

増築部分の廊下

案内された部屋

豪華だった夕食

併設する食事処の案内
by mago_emon3000 | 2022-08-14 11:10 | 北海道・東北の郷愁宿 | Comments(0)