川底の足元湧出の湯を日帰り利用-奥津温泉・奥津荘
美作の山峡、吉井川上流域に位置する奥津温泉。川底から温泉が湧き足踏み洗濯でも知られる温泉場で、川に沿って旅館が並び小規模ながら温泉街が展開している。
その中でも「奥津荘」は格式ある佇まいを見せており、昭和2年築の母屋は登録有形文化財となっている。以前から一度宿泊してみたいものとの思いを抱いていたが宿泊料が高いこともあってなかなか思い切れず、今回は近くを泊りがけで訪ねた機会を利用して日帰り入浴でお世話になることにした。
しかしその浴場も貴重なもので、川底の地形をそのまま利用し足元湧出の本格的なものだ。奥津温泉は津山藩主も愛用していたといい、森忠政は番人を置いて鍵を掛け、湯を独占して入浴したため「鍵湯」と呼ばれた。むろんそのままではないだろうが、奥津荘にある4つの浴場の内の一つも「鍵湯」と呼ばれる。
日帰り利用は宿泊客が宿を出発した後の10時45分からとなっており、10時半過ぎに向ったがさすがに人気らしくすでに初老夫婦と小学校低学年くらいの男の子を連れた父親の二組が既に開始を待っていた。
当日は鍵湯が男湯となっており、今湧き出したばかりの新鮮な湯を味わうことが出来た。なお4つの浴室のうち2つは宿泊客の貸切専用らしい。浴槽は岩石がむき出しとなっており、楽々座って入れる箇所もあるが立つほどに深い場所もある。なるほど天然の河床をそのまま利用しただけあり野趣に満ちた入り心地だ。
河床の湯ということで浴室へは階段を下りるということになるが、途中の壁や階段に施されたタイル画も趣があった。湯上りに改めて館内を見ると、古くなったり傷んだ建材は適宜修繕しながらも、老舗温泉旅館にふさわしい風情と格式を有していた。客室などはもちろん見物できないが、玄関を上った横の木質感一杯のラウンジで休憩していると十分満ち足りたものを感じることが出来た。
いつか今度は宿泊目的で訪ねたい。
(2022.04.10訪問)
奥津荘の正面
浴室へのアプローチ タイル細工が印象的だ
浴室(旅館サイトより)
客室へ続く廊下
格式ある玄関回り
by mago_emon3000 | 2022-05-14 16:42 | 山陽の浴場 | Comments(0)