温泉津温泉・大正初期創業の宿-のがわや旅館
大口客の泊るようなビル型旅館は全くなく、歴史を感じられる旅館街の展開する温泉津温泉。その中心付近にある「のがわや旅館」に今回泊る機会を得た。
温泉街から見ると、一見現代風の建物に見えなくもない。しかし、その表に面した部分の客室は大正初期(1912年)創業当時の建物とのこと。裏に続く廊下を進み、階下に浴室、さらに奥に客室棟がある。表側の棟と奥の棟に囲まれた部分には狭いながらも中庭がある。二階からその中庭を通してみると、一連の木造の建屋群の西側に鉄骨造りが接しているのがわかる。その部分は階段と大広間として使われている。いずれにしても、表の外観からは全く想像できない造りであった。
これは数軒隣にある先年泊った「ますや旅館」にも共通しており、狭い敷地内で増改築を重ねた苦心の跡がうかがえる。
泊ったのは大正期築という表側の二階で、12畳間と8畳間が続いた広々とした部屋だった。もともとは別々の部屋だったと思われるが、襖で仕切られただけの部屋というのはさすがに現代の宿泊客には受け入れがたいものがあるのだろう。それぞれに立派な床の間があり、12畳間の方は見事な一枚板が用いられていた。詳しいことを知りたいので帰り際にご主人に聞いてみたが、材料など詳しいことは知らないとのこと。創業からかなりの時間が経過しているため、ご主人といえども細部まで把握されていないのは致し方ないところであろう。
浴室は3か所あり、いずれもこぢんまりとしており塩化物泉の源泉がかけ流されている小さめの浴槽と循環湯の大き目な浴槽が組み合わされ、貸切制でじっくりと味わうことが出来た。
夕食は部屋食、朝食は大広間での提供で、夕食は地物の魚介類を中心とした味わい深いもので、フグの湯引き、鯛の奉書焼きといったところが印象に残った。当日は連休中でやや割高の料金設定だったが、全体には比較的廉価な宿泊料の設定である。十分満足できる内容と言えるだろう。
現代の宿泊客にも快適に過ごせるよう手は加えられているものの、室内その他の設えの各所に古い姿が残され、老舗であることが伝わってくる宿であった。
(2021.05.02宿泊)
表通りから見る「のがわや旅館」
泊った部屋の様子(12畳間)
泊った部屋の様子(8畳間)
表の建屋二階から中庭越しに見た様子(1)奥に見える棟も客室となっている
表の建屋二階から中庭越しに見た様子(2)鉄骨造りの増築棟が接している
中庭周りの様子
浴室に向う廊下 この付近も古い建材がそのまま使われている
浴室
夕食の献立の一部
by mago_emon3000 | 2021-05-30 19:36 | 山陰の郷愁宿 | Comments(0)