かつての藩校跡に位置する老舗-郡上八幡・料理旅館備前屋
奥美濃の城下町として知られる八幡町は長良川支流・吉田川沿いに城下町が展開し、それを見下ろす様な位置にかつて山城が構えられ、今訪ねてもひとつの完成した町という印象が強い。広範囲にわたって古い町並も残り、風情豊かなところである。
この町で最も古い旅館という「備前屋」は城山の麓というべき位置にあり、背後に緑を背負い端正なたたずまいを見せていた。旅館の位置は、江戸時代に藩校があったところと言われ、その一等地に明治に入って創業した老舗である。備前屋という屋号は郡上藩主であった青山氏にゆかりのある土地ということで名づけられたとのことである。
門をくぐると左手に主屋、庭を挟んで右手に離れが配された純和風の佇まいで、今は早春の頃で庭の緑は淡いが、四季折々表情を変え宿泊客の目を楽しませてくれるに違いない。私は離れを予約していたが、部屋は庭ではなく旅館前の街路に面している。風情ある町の風景、そして満開の桜が咲く吉田川を遠望しそれはそれで悪くはない。主屋に比べ建物の造りとしてやや新しいか、後になって改装されたかに思えたが私だけで泊るのには十分すぎるほどであった。隅々まで手が行き届いているというのがわかり、清潔感を強く感じる部屋だった。
食事は主屋二階の個室でということで、その際に建物を色々見て回った。玄関回りは大きなガラス張りとなっており、現代風に改装されたものだろうが開放感のある明るい雰囲気は好感が持てる。一方床などに用いた建材は創業当時のままと思われ、玄関を入った廊下部分、二階廊下には大きな一枚板が用いられていた。聞くと栃の木の板なのだという。二階廊下などは長年の使用で光沢を放ち、老舗旅館にしか出せない風合いを醸していた。
一方、風呂場やお手洗等、水回りの部分は現代風に改装されていた。単に建物や設備が古いだけでは現代の宿泊客にはなかなか受け入れてもらえない。伝統的な姿も保ちながら、不便のないように努めることは必要なことだろう。
食事も料理旅館と云われるだけあって飛騨牛をはじめ地物の食材、旬の山菜などが品数多く、十分すぎる品々だった。食事処となった個室も明り取りのある床の間など凝った造りで、庭を見下ろし落ち着いた雰囲気でいただくことが出来た。奥が襖張りとなっているので普段は広間として使われるのだろう。
また、女将さんをはじめ宿の方の対応も老舗旅館にふさわしいものであったことを付け加えて宿泊記を締めたい。
(2021.03.28宿泊)

宿の外観

「藩校 潜竜館跡」の表示


玄関付近の様子


泊った離れの様子

主屋廊下から庭を望む


二階廊下 光沢を放つ栃の木の一枚板


食事をした部屋の様子

夕食(一部)


朝食

by mago_emon3000 | 2021-04-29 14:52 | 東海・北陸の郷愁宿 | Comments(0)