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元祖岩国寿司の宿―割烹旅館三原家



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割烹旅館三原家



岩国の古くからの町は、錦帯橋付近から東側に広がるもと城下町の町人町地区で、立派な商家の建物も所々に見られる。


そのような古い街区の一角にある「割烹旅館三原家」は、当地の郷土料理である岩国寿司を初めて藩主に献上したことからも知られる家で、300年にわたりその味を守り続けているとのことだ。今の御主人は8代目で、当初は今とは別の場所で料亭を営んでいたが5代目から旅館業をはじめ、6代目の時に今の位置で営業を始めたそうで、本館は築96年になるという。


玄関を入ると帳場から池のある中庭までが見渡され、その庭を見下ろすようにRC造りの新館が建っている。新館は本館と廊下と階段でつながっているが、各館の客室の在り方はこんなところにも部屋があるのかと思わせなかなか複雑な配置となっていた。


客室で特筆されるのが、美空ひばりさんも泊ったといわれる2階にある二間続きの部屋だ。この近くに以前芝居小屋があったそうで、講演に訪れた時泊ったのだという。もちろん本館で最も良い部屋だが、しばらく使っていないのだという。ここには掲載しないが立派な欄間が印象的で、格式を感じる部屋だった。


女将さんに本館を一通り案内してもらうと、二階には大広間もあり、今でもこの部屋でバスツアーなどの団体客に岩国寿司を出すことがあるのだそうだ。最大150名も収容可能という。広間横の廊下の佇まいは老舗旅館らしい格式を感じたが、築後ほとんど修繕をおこなっていないため色々と傷みがでているとも話されていた。


案内されたのは本館1階の14畳ほどの部屋で、室内の一角には岩国寿司を造る木製の箱も展示されていた。広く私だけが泊るには過分ではあったが、外が見えないのが少々残念だった。当日はもう一組、小さな子供を連れた親子連れの客があったが、こういった旅館としては珍しい客だろう。


もう一つ珍しいものというと風呂だろう。岩風呂ということで案内されたが、浴槽が昔ながらの鉄製で、女将さんいわくやはり美空ひばりさんも入浴されたのだという。ご主人の意向か、手を加えなかったことで建築当時の貴重な姿がそのまま残されており、民俗遺産のようにも思えた。


女将さんによると、旅館の前には昔駅があったのだという。詳しくは知らない様子だったがこの記事を起すにあたりネットで知り得た情報によると、昭和4年まで岩国駅前からここまで路面電車が伸びていたらしい。廃止されるまでの10年弱とはいえ、電車で訪れた観光客に真っ先に眼の触れる名旅館だったに違いない。

2020.06.20宿泊)



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入口及び玄関先の風景(2枚目左側の写真は岩国寿司を切る六代目の姿)



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案内された部屋には岩国寿司を造る箱が展示されていた





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部屋にあった温度・湿度計




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階段と二階の廊下回り




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鉄製の風呂桶が残る岩風呂


by mago_emon3000 | 2020-07-04 16:30 | 山陽の郷愁宿 | Comments(0)