昭和レトロな建物に力強い熱い湯―大鰐温泉・若松会館
大鰐温泉は津軽平野の南端に位置し、大小の旅館が温泉街を形成しているもののひっそりとした雰囲気の町である。
その日の宿をこの町の温泉民宿に押えていた私は、早く着いたので宿に入る前にどこか共同湯にでも入るかと思い、川岸の「若松会館」と書かれた浴場に入ることした。なかなか昭和レトロ感の漂う三階建の建物である。
浴槽は思いのほか広く、洗い場も広くゆったりとしているがとにかく熱い湯で、1・2分ほど浸かっては浴槽ふちで小休止という形でしか入れなかった。4・5名ほどの地元の客が出入りし、浴槽のふちで洗面器を使い体を洗う客もあった。そういえば泊った民宿では熱い湯を脱衣所床に回し、オンドルのように利用していた。
若松会館(浴室はネットより拝借)
それはともかく、この浴場そして大鰐温泉には忘れえぬ思い出がある。
その夜私の携帯にその浴場の御主人?から連絡が入ったのである。見知らぬ番号は出ぬようにしているが、偶然出たことが功を奏した。脱衣場で私の帰りの切符を見つけたので預かっているというのである。落としたことなど全く認識なく、最悪帰る段になって途方に暮れる所であった。
どうして電話番号を知ったのかというと、切符と同時に前日に泊ったホテルの領収証もあって、そこに問い合わせた由。そのホテルはネットで予約しており、私の携帯番号も通知されていた。主人は事情を説明し、普通は第三者には知らせないはずの番号を教えてもらったようだ。
当日この町に宿を取っていたのも幸運だった。どこか遠いところに泊まる予定にしていたら、翌日の行程にも大きく影響する。数々の好い偶然が重なったことで、無事行程を完遂することができた。
何よりも、浴場の御主人の親切心に救われた出来事であった。
(2016.12.30訪問)
by mago_emon3000 | 2020-05-29 19:36 | 北海道・東北の浴場 | Comments(0)