蕎麦が自慢の蔵造り宿-小諸・つたや旅館
まだ信濃路にとっては春浅い時期、探訪の一夜を小諸の北国街道沿いにあるこの蔵造りの宿に求めた。どこで情報を仕入れたかは覚えていないが、直接電話で予約を入れた。まだ信州では桜開花前の時分で、「遅い雪が降ることもあるけどまあ大丈夫でしょう」とご主人と話を交わしたのを覚えている。
この「つたや旅館」は創業300年を数えるといわれ、明治の建築というこの建物は著名な俳人・高浜虚子が戦時中疎開を兼ねて停泊したと云われる部屋も残り、当日は他に一人の常連らしい客があるばかりで、この部屋に泊ることになった。坪庭に面した部屋は街道筋の賑わいなど全く無縁で、壁には虚子の句の掛軸などが掛けられていた。
夕食は見慣れない山菜の数々、地元の鯉料理など品数多く、主人と焼酎を酌み交わしながら仰け反っていると、さらにこの店の名物という蕎麦が出てきた。さすがに全てを食することはできず恐縮してしまったが、記憶が間違いなければビジネスホテル並の安い宿泊料金であったはずだ。
帰り際に奥さんから今年一杯で旅館は止められるということを聞いた。
その後、佐久市内で「めん茶房つたや」という蕎麦屋を新たに開かれているようだ。
また、旧つたや旅館の建物は、「ギャラリーつたや」として、貸し店舗やレンタルスペースとして使われているようだ。
昨年も東信地方を訪ね、店があるという佐久市中込にも足を記したのだが、このつたやのことをうっかり忘れてしまっていていた。遠方ながら再訪なるか。ここに記事を立てることで、備忘録としたい。
(2006.04.08宿泊)

旧北国街道沿いに建つ旧「つたや旅館」


泊った部屋には高浜虚子の句が記された掛軸もあった

by mago_emon3000 | 2019-10-29 22:39 | 関東・信越の郷愁宿 | Comments(0)